できるだけいろいろなことを書く

できるだけまじめなことと、くだらないことを書きます。ファシリテーションやグラフィックレコーディングと関係あることかもしれないし、関係ないことかもしれません。

文章添削講座を受けた話

f:id:nummy:20210108161157j:plain

はじめに

  • この記事は常体で書きます。これはそういう気分の文章です。
  • 以前公開したものに加筆修正しています(こちらが正です)。

本文

昨年(2020年)の春に少しフォーマルな短文を書く必要ができてさあどうしよう、と思っていたところ、編集者/ライターの青山ゆみこさんがメールベースの文章添削講座を開くというので早速申し込んだ。名前が一文字違いでしかもお互い神戸在住(生活圏もかなりかぶっている)というだけでなく、年齢もひとつしか変わらず、同じ区で育っているそうだ。子どもの頃にもすれ違っているかもしれない。これはお願いせねばならない。

いや、そんな理由だけでお願いしたのではなく、以前読んだ著作にとても感銘を受けていたことや、青山さんが編集者であり、かつ書き手でもある方という点がポイントだった。今度書く予定の文章はなにしろ限られたスペースだから言いたいことを誤解なく伝えたい。それにはやっぱり編集者の視点が必要なのではないだろうか……と、今になれば理由も言語化できるのだが、告知を見たときはそんなことを考える暇もなく、秒でわりあい失礼なメールを送っていた*1

note.com

note.com

書いた文章の添削にくわえ、その間数通のメールのやりとりでも非定型なフィードバックが得られるのがこの講座の流れである。プロから1:1で添削を受けられるぜいたくさ、そして濃密さ。

この「赤字書き込み」の量や内容については、実際に受講された方のほぼ全員に近い方が、驚かれています。 それは、おそらくいま想像されている「文章添削」とちょっと異なる、わたしからあなたへのメッセージのようなものだからです。

個人向け文章添削講座「第11期募集のお知らせ(限定5名)|Yumiko Aoyama|noteより

青山さん自ら説明しているとおり、その赤ペンは添削というよりメッセージだった。

「うおっ、読める人はここまで読む。怖い。プロやばい(語彙力がなくなる)」。

「怖い」と書いた。それは自分でもうすうす気づいていたことを言葉ではっきりと指摘されたからだ。

文中ブロードウェイミュージカルの好きな点を書いたら、「実は裏に伝えたいことがあるのではないか? 」という主旨の指摘をされたのだ。

実はこの指摘こそが、私が文章添削を受けたいと思った理由だった。当初は「なんか最近の若い人、特にファシリテーション界隈の人ってまっすぐ素直でキラキラした文章書くよなー、どうも私の性格はひねくれていていけない、これでは伝えたいことも伝わらんし炎上しかねんよな」となんとなく思っていたに過ぎないのだが、返ってきたフィードバックを見た瞬間、思考の奥底にぼんやりとしていた影にはっきりと輪郭が与えられたような衝撃を受けた。

ただのオタク語りから「日本の演劇産業好きじゃない」がにじみ出て、伝わってしまった! 私は何かを貶めなくては(disと表現するほうが適切かもしれない)好きなことについて書けないのか? すごくイヤなやつじゃないか!

それで、しばらく書く手が止まってしまった。以前からTwitterでさえ「Aですが(否定)Bですよね」構文ばかり書いていることにうんざりしていたのだ。ましてやブログ、考え方を知ってもらうための文章をまっすぐ肯定的な視点で書ける気がしない。例の短文やその他のブログ用の文章を下書き用エディタに書いては消し、書いては放置し、を繰り返すことになった*2

しかし、青山さんからのフィードバックではそのことが肯定的に捉えられていた。現状は書き終えて読み返したときに「ああ、やってもうた、またネガティブ起点だ」となっているに過ぎないが、自覚的にコントロールできるのであればいつかはうまく他者に読んでもらえるかもしれない。加えて、他者から指摘されることはそれこそが自分の特徴にほかならない。それがはっきりしたことこそが、この文章添削講座を受けた最大の収穫だったように思う。他の受講者の方もよく言われることだが、この講座はテクニックをどうにかするというより、他者の目を通して自身を見つめ直すプログラムなのだ*3

ではこれから何をするか。それはもう、読み書きの領域以外にもさまざまなトレーニングを積み重ねながら「伝えたいことを伝える」活動をしていくことしかないだろう。それが健全な批判と受け止められるか、ただの言いがかりと捉えられるかは読者の判断である。

とはいえ、こんなことも考えていたので、できるだけマイルドにしたいという意思はある……。精進します。問題のフォーマルな短文はわりあいニュートラルに書けたと思っている(関係者にも、いちおうそのようにフィードバックいただいている)。

さいごに

この記事に着手して公開するまでに半年かかりました。ことほどさように「自分についてうすうす気づいていたこと」は扱いがタフなものです。私が人の心を触りにいくようなワークショップのアクティビティをやらないこと、また安易に手を出す(ように見える)事例を糾弾しているのはこういった背景によるものです(と、やっと言語化できました)。ワークショップのパワフルさを知った人なら、怖くて手が出せないと感じるのでは*4。泣かせるワークショップは虐待、が持論です。

おすすめコーナー

青山さんは「暖かくも鋭さを感じる文章」(これは最初のメールに書いた表現)を書く方だと感じています。優しいまなざしがベースにあるのだけれど、ただ個々に寄り添うだけでなく社会に根ざした大きな視点も存在していて、私はとても好きです。

人生最後のご馳走 (幻冬舎文庫)

人生最後のご馳走 (幻冬舎文庫)

ほんのちょっと当事者

ほんのちょっと当事者

  • 作者:青山ゆみこ
  • 発売日: 2019/11/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

*1:後で失礼をわびる言い訳メールも送った

*2:文具案内ブログでさえストップしていた

*3:そういうわけで、すでにある程度書ける人は受講の効果がより高いと思う。実際、文筆のプロがたくさん受講されていて「私なんかが受講したと公表してよいのか」とびびっていたのもこの記事の公開が遅れた理由のひとつだ

*4:『心をあやつる男たち』が有名ですね

Neulandの細いペンについてまとめてみた

前置き

Twitterを見ていたら『漫勉』惣領冬実さん回の反響で「ミリペン」がトレンド入りしていたので、ふとNeulandのミリペンのことを思い出しました。

onyourmarkers.com

ドイツのワークショップ用品ショップ・Neuland(ノイラント)の話はメインブログ「ファシリテーション文具案内」でときどきしていますが、2020年新製品の「FineOne Sketch」はあんまりファシリテーション目的ではないなと思ったのでこちらに書きます。これは字幅0.5mmの極細ペンで、スケッチノート向けと位置づけられています。スケッチノートがファシリテーションでない、と言い切ってしまうと語弊がありますが、場に対する影響はごく限定的であると思っているので、たまに言及するもののいちおうスケッチノート関係はメインブログのスコープ外にしています。

もう一点、あんまり説明書くのも長くなるので背景などの説明は不親切です。Neulandのことをある程度知っている人向けの記事です。Twitterに連ツイするのもどうかな、と思ってブログにしました。

本題・細いペンをまとめてみた

f:id:nummy:20201211164616j:plain 以前からNeulandがスケッチノート向けとして販売していた「FineOne」という細字ペンシリーズが今年リニューアルされました。今はオンラインショップに新旧製品が入り乱れてよくわからなくなっているので、表にまとめてみました。ただのオタクの息抜きです。

global.neuland.com

旧製品はとにかくややこしかった

ほとんどの製品を持ってはいますが、もうややこしくてそれぞれの説明をテキストで書きたくない。要はBigOneなどと同じインクを詰め替えて使えるペン(ペン先形状さまざま)と、ステッドラーのピグメントライナーにNeulandのロゴが入った製品とがあった、ということです。たしかに、ステッドラーのピグメントライナーは(だいたい世界中どこでも)普通の文具店で買えるのでNeulandが在庫を持つ理由はあまりないですね。

私は細いOutlinerをわりと重宝していましたが、こちらも在庫限りとなります。重宝していた、といっても他の製品じゃだめか? というとそうでもなかったかな……。Round芯は1.0でちょっと太いと思っていたし、それこそピグメントライナーの1.0とか1.2、斧型なんかで代替可能。筆ペンもけっこう日本メーカーの製品が海外で売られてるのでこちらも優位性はあまりないかも(bikablo考案者のMartin Haussmannでさえトンボの「筆之助」使ってた)。そもそも多くの筆ペンのインクは「水性顔料系・耐水性」なのでOutlinerインクの特徴そのものなのです。

新製品はミリペンと筆ペンに集約

新製品の「FineOne Sketch」(ミリペンタイプ)のカラーペンは字幅を0.5mmに統一しています。インクを詰めていない空軸(empty)は0.1、0.3、0.5、0.7が用意されているので、好きな字幅に好きな色を詰めればよいという仕組みです。ミリペンタイプは14色、筆ペンタイプは16色(カラーセットは少し異なります)だけで、後は好きなインク詰めてね! という仕組み。Neulandの一般的なインク(RefillOne)は混色可能ですし、いろいろお好みでどうぞというやり方を徹底してきた感があります。

顔料系(耐水性)黒インクはなくなった

「FineOne Sketch」は黒インクのみ字幅0.1、0.3、0.5、0.7が売られています。主線には黒、という思想とは思いますが、染料系のRefillOne #100なんですよねえ。今回のリニューアルで、Neulandの細字ペンから顔料系の黒は消えました。「FineOne Sketchの軸にOutlinerインクを入れていいか」とNeulandに聞いてみたところ、「詰まるからダメ」との回答も得ています。当たり前ですね。主線がにじむの絶対イヤ派(私)は、他の製品を探しましょう。ピグメントライナーでもピグマでもコピックマルチライナーでも、日本では優秀なミリペンが比較的手軽に買えます。

要はコストと環境配慮からの「選択と集中」(なのかな)

多品種の在庫を持つコストを考えると、インクと空軸を提供してユーザーが好きな色を詰めてもらったほうが絶対いいですよね。もう一点、ピグメントライナーのように詰め替えできない製品は(中身が基準を満たしていたとしても)環境配慮のポイントが下がるのかもしれませんね。ドイツの会社だし、環境基準がだいぶ経営に影響を与えるんじゃないかなと勝手に想像しています。そこで「選択と集中」。

BigOneシリーズと同じ色が使える以外に優位性はあるか?

空軸の思想は呉竹の「からっぽペン」と基本同じです。「からっぽペン」は0.4と筆ペンがあるので、「FineOne Sketch」の字幅にも好きな色を詰めて使えるのは利点でしょうか。うーん、こじつけかな。*1

呉竹 ペン容器 からっぽペン ほそ芯 5本セット ECF160-451

呉竹 ペン容器 からっぽペン ほそ芯 5本セット ECF160-451

  • 発売日: 2020/08/31
  • メディア: オフィス用品

個人的には、今のFineOne(筆ペンタイプ)はグラフィックレコーディングの計画をするときに手元のノートにBigOneと同じ色でさっと書けるのがよいところなのですが、スケッチノートだけ描く人なら他の選択肢がたくさんありますね。

極細天国・日本在住者は選択肢が多い(多すぎる)

結論としては、三菱鉛筆の「EMOTT」が安価で簡単に手に入る日本では、いくら色がたくさん使えるといってもミリペンタイプのFineOne Sketchを買う意味ないんじゃないの? と思ったりもする……。EMOTT、あんなにきれいな色で細くて丈夫で「水性顔料インク・耐水性」ですからね。Neulandのインクみたいに光でもりもり退色しないよ……。

三菱鉛筆 水性ペン EMOTT エモット 10色 No.1 PEMSY10C.NO1

三菱鉛筆 水性ペン EMOTT エモット 10色 No.1 PEMSY10C.NO1

  • 発売日: 2019/04/19
  • メディア: オフィス用品

その他も、日本製品はとにかく細字のペンが充実しています。日本に住んでいる限り、わざわざFineOne Sketchをがっつり揃える意味はあまりなさそうだなあと思います。ふだんは「日本のメーカーは極細ペンばっかり出してる! 日本人は米粒に日記やスケジュール書くんか!」など意味不明にキレている私ですが、やっぱり日本の極細はすごいよ(というわけでFineOne Sketchは305と500だけ買ってみました)。

*1:からっぽペンに万年筆インクを詰めているブログ等を見かけますが、(Neulandも)専用のインク以外は非推奨なので、その点は留意してください。インク沼の基本は「自己責任」です!

「IT革命」でビジュアルファシリテーションしていた昔話

今は昔、20世紀最後の年に「e-Japan戦略」というものが立ち上がりました。当時の首相・森喜朗氏がイット革命って言ってたアレです。若者はWikipediaを読んでください。その一環として「IT講習会」という催し施策が全国の地方自治体で開催されました。

ja.wikipedia.org

21世紀に入ってまもなく、なぜか「県から派遣されるIT講習会の先生」の仕事をすることになりました。県内さまざまな市町の公民館などに出向いて、Windowsの基礎やWord、Excelの使い方を地域のみなさんに教えます。今でも謎のワードアート書類を見かけることがあるのは、私たちの責任かもしれませんごめんなさい*1

さて、とある中山間地域の町*2はとりわけ講習会の企画に熱心で、何度も呼んでいただきました。私はその町に行くのが大好きでした。アイデア豊富な担当者さん、受講者もご高齢ながら意欲のある方ばかり、そして町はずれの道の駅で食べる山の幸ランチ。会場もすてきで、地元の木材をふんだんに使った、小規模ながらも明るい雰囲気の図書館に設置されたPCルームでした。何から何まで最高です。

ただ一点、プロジェクターがないことを除いては。

画面の投影ができない環境で、1対多のPC講習はできるのか。

担当者の方が、ExcelやWordの画面をA1ほどに大きく引き延ばして印刷してくださいました。それをホワイトボードに貼って進めます。でもやっぱり、受講者には画面の細かい表示が伝わりません。なぜならそのPCルームに置かれているのはデスクトップPCで、しかも壁を向いて横並びだからです(そりゃ、図書館のPCだもの……情報端末として設置してたらそうなりますわね……)。席ががっちり固定! 遠い! 前*3で何かやっててもよく見えない!

それでどうしたか。

主要なアイコンやマウスポインタスクリーンショットを印刷し、厚紙に貼り付けて持参しました。ほぼ紙芝居です。そんなかんじでも最後にはみなさんExcelで関数入れてオートフィルなんかも普通にできるようになりましたので、人間すばらしいものです。 f:id:nummy:20201204155718j:plain

そして、よく考えるとプロジェクターで自分の画面を映しても、アイコンやマウスポインタはそもそも見えにくいわけです。拡大してもたかがしれてますし*4、全体の位置関係が分からなくなります。そこで私はどこの会場にもこのアイコン紙芝居セットを持って行き「はいこの形ですよー」とかやっていました。

今になって思うと、これもビジュアルファシリテーションといえる方法です。自サイトのプロフィールを書いているときにふと思い出しましたが、今も昔もやってることがあまり変わってないですね。

*1:デファクトスタンダード・FOMのテキストに書いてあったのです

*2:今は合併して某市の一部になりました

*3:前というか横

*4:WindowsMeとかWindows2000を使っていた時代のことですから、いろいろお察しください